有棘赤血球舞踏病
概要
有棘赤血球舞踏病(Chorea-acanthocytosis)は、進行性の舞踏運動や精神症状を特徴とするまれな遺伝性神経疾患である。赤血球の形態異常(有棘赤血球)を伴い、主に若年〜中年成人で発症する。常染色体劣性遺伝形式をとる。
要点
- 舞踏運動と精神症状が進行性に出現
- 有棘赤血球の出現が診断の手がかり
- 常染色体劣性遺伝で若年成人に多い
病態・原因
VPS13A遺伝子変異によりコレオアカンチノーシン蛋白が欠損し、神経細胞障害と赤血球膜異常が生じる。常染色体劣性遺伝で家族歴がみられることが多い。
主症状・身体所見
舞踏運動やジストニア、オーラルジスキネジアなどの不随意運動がみられ、精神症状や認知機能障害も進行する。筋萎縮や末梢神経障害、舌・口唇の咬傷、嚥下障害が特徴的である。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血液塗抹標本 | 有棘赤血球の増加 | 赤血球形態異常が重要な診断所見 |
| 遺伝子検査 | VPS13A遺伝子変異の同定 | 病因遺伝子の確定診断 |
| 脳MRI | 尾状核・被殻の萎縮 | 進行例で基底核萎縮がみられる |
有棘赤血球の存在と神経症状の組み合わせが診断の鍵となる。遺伝子検査でVPS13A変異を確認することで確定診断となる。脳MRIでは基底核萎縮が進行例で認められる。
治療
- 第一選択:対症療法(抗精神病薬、抗てんかん薬など)
- 補助療法:リハビリテーション、栄養管理、嚥下訓練
- 注意点:根治療法はなく、合併症予防とQOL維持が重要
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| Huntington病 | 常染色体優性遺伝、家族歴、精神症状強い | 有棘赤血球なし、HTT遺伝子変異 |
| Wilson病 | 若年発症、肝障害、カイザー・フライシャー輪 | 血清銅・セルロプラスミン低値 |
| 小舞踏病 | 小児発症、リウマチ熱の既往 | 有棘赤血球なし、抗Streptolysin O抗体高値 |
補足事項
本疾患は進行性であり、根治療法が存在しないため、早期診断と多職種連携による支持療法が重要となる。患者・家族への遺伝カウンセリングも推奨される。