家族性アミロイドポリニューロパチー
概要
家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)は、主にトランスサイレチン(TTR)遺伝子変異によるアミロイド蛋白の沈着が末梢神経や臓器に障害をもたらす進行性の遺伝性疾患である。感覚・運動・自律神経障害が多彩に現れ、消化器・心臓など全身性の症状を示すことが特徴である。
要点
- TTR遺伝子変異によるアミロイド沈着が原因
- 末梢神経障害および多臓器障害を呈する
- 早期診断・治療が予後改善に重要
病態・原因
トランスサイレチン(TTR)遺伝子の変異により異常TTR蛋白が産生され、アミロイド線維として末梢神経や心臓、消化管などに沈着し障害を起こす。常染色体優性遺伝形式をとることが多い。
主症状・身体所見
四肢の感覚障害や運動障害が進行性に出現し、自律神経障害として起立性低血圧、消化管運動障害、発汗異常などを伴う。心筋障害や腎障害、網膜症状など全身性の症状もみられる。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 神経伝導速度検査 | 末梢神経伝導速度低下 | 感覚・運動神経ともに障害 |
| 生検(神経・皮膚・心筋) | アミロイド沈着 | Congo red染色陽性、偏光下で緑色二重屈折 |
| 遺伝子検査 | TTR遺伝子変異の同定 | 家族歴と合わせて診断確定 |
診断は臨床症状・家族歴・神経伝導検査・生検でのアミロイド沈着証明、TTR遺伝子変異の同定によって行う。心エコーやMRIで心筋アミロイドーシス所見を認める場合がある。
治療
- 第一選択:肝移植またはTTR安定化薬(タファミジス等)
- 補助療法:対症療法(疼痛管理・自律神経障害対策・栄養管理)
- 注意点:早期治療開始、心不全・腎不全など臓器障害の進行管理
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 糖尿病性ニューロパチー | 糖尿病の既往・高血糖 | 血糖値上昇、アミロイド沈着なし |
| 慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー | ステロイド・免疫療法有効 | 髄鞘障害主体、アミロイド沈着なし |
補足事項
日本ではTTR Val30Met変異が多く、発症年齢や進行速度は遺伝子型や地域によって差異がある。近年はTTR安定化薬やRNA干渉薬など新規治療薬の登場により治療選択肢が広がっている。