失行
概要
失行は運動機能や筋力に問題がないにもかかわらず、目的的な動作の遂行が障害される高次脳機能障害である。主に大脳皮質の損傷により生じ、脳血管障害や神経変性疾患などが原因となる。日常生活動作や社会的適応に大きな支障をきたすことが多い。
要点
- 意図的な動作の遂行が障害される
- 運動麻痺や感覚障害では説明できない
- 脳血管障害や神経変性疾患が主な原因
病態・原因
失行は、大脳皮質(特に左半球の頭頂葉や前頭葉)の損傷により、運動の計画や実行のプログラムが障害されることで発症する。主な原因は脳梗塞や脳出血などの脳血管障害、外傷、神経変性疾患(例:Alzheimer型認知症)などである。
主症状・身体所見
目的的な動作(例:道具の使用、ジェスチャー、模倣動作)が適切にできなくなる。運動麻痺や協調運動障害、感覚障害では説明できない点が特徴であり、失語や失認など他の高次脳機能障害を合併することも多い。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 神経心理学的検査 | 模倣・道具使用・命令動作で遂行障害が明らか | 失行のタイプ分類に有用 |
| 頭部MRI/CT | 頭頂葉・前頭葉・側頭葉の病変を検出 | 脳血管障害や萎縮の評価 |
| ADL評価 | 日常生活動作の障害度を評価 | 社会的適応への影響を把握 |
失行の診断は、運動麻痺や感覚障害を除外した上で、神経心理学的検査による動作遂行障害の確認が必須である。画像検査で責任病巣の局在や基礎疾患の特定を行う。
治療
- 第一選択:作業療法・リハビリテーション
- 補助療法:基礎疾患(脳血管障害・認知症など)の治療
- 注意点:早期介入と家族指導が重要
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 失語 | 言語理解・表出障害が主 | 言語検査で明らかな障害 |
| 失認 | 対象の認識障害(視覚・聴覚など) | 感覚検査で認知障害が明確 |
| 小脳失調 | 協調運動障害・筋緊張低下 | 小脳系徴候が主 |
補足事項
失行には観念運動失行、観念失行、構成失行など複数のタイプがあり、責任病巣や臨床像によって分類される。失行はしばしば失語・失認と合併し、包括的なリハビリテーションが必要となる。