先天性耳瘻孔
概要
先天性耳瘻孔は耳介の前方や上部に生じる小さな開口部で、生まれつき存在する瘻孔である。多くは無症状だが、感染や分泌を伴うことがある。遺伝性の場合もあり、家族内発生がみられることもある。
要点
- 耳介前方や上部に小孔を認める先天異常
- 感染・分泌を伴う場合は治療が必要
- 無症候性例では経過観察が基本
病態・原因
胎生期の耳介形成過程における鰓溝の癒合不全が原因となり、皮膚と皮下組織に瘻孔が残存する。常染色体優性遺伝形式をとることもあるが、多くは孤発例である。
主症状・身体所見
耳介の前方や上部に小さな開口部がみられ、通常は無症状である。感染時には発赤、腫脹、疼痛、膿性分泌などを認める。繰り返す感染や膿瘍形成が特徴的である。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 視診 | 耳介前方や上部の小孔 | 典型的な部位・形状が重要 |
| 超音波検査 | 瘻孔の深さや膿瘍形成の有無 | 感染時や手術前に有用 |
| 細菌培養 | 感染時に膿から細菌を同定 | 治療方針決定に役立つ |
視診による特徴的な小孔の確認が診断の基本となる。感染や再発例では超音波検査で瘻孔の範囲や膿瘍形成を評価する。鑑別診断として耳前瘻孔以外の皮膚瘻や嚢胞性疾患との区別が重要。
治療
- 第一選択:感染がなければ経過観察、感染時は抗菌薬投与
- 補助療法:膿瘍形成時は切開排膿、反復例では瘻孔摘出術
- 注意点:摘出術は瘻孔全体の把握が重要で再発予防に留意
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 正中頸囊胞 | 頸部正中線上、嚥下で移動 | 超音波で嚢胞構造を確認 |
| 耳下腺腫瘍 | 耳下部の腫瘤、進行性増大 | 画像検査で腫瘍性病変 |
| 外耳道閉鎖症 | 外耳道の閉鎖、難聴を伴う | 聴力検査、CTで評価 |
補足事項
無症候性の場合は生活上の制限は特に不要であるが、感染を繰り返す場合は早期の外科的治療が推奨される。再発予防には完全摘出が重要となる。