ペスト
概要
ペストはYersinia pestisによる人獣共通感染症で、主にノミを介したげっ歯類からの伝播によって発症する。歴史的に大流行を引き起こした重篤な細菌感染症であり、肺ペスト、腺ペスト、敗血症型ペストなど多様な臨床型を呈する。
要点
- Yersinia pestisが原因となる急性細菌感染症
- 腺ペスト・肺ペスト・敗血症型など臨床型が多彩
- 迅速な診断と抗菌薬治療が致死率低下に重要
病態・原因
ペストは主に感染したノミの吸血によってヒトに伝播する。Yersinia pestisはリンパ節、肺、血流などで急速に増殖し、重篤な全身症状を引き起こす。リスク因子には流行地域への渡航やげっ歯類との接触が挙げられる。
主症状・身体所見
腺ペストでは高熱、著明なリンパ節腫脹(ペスト腫)、全身倦怠感が出現する。肺ペストでは急激な呼吸困難、咳嗽、血痰が特徴的であり、敗血症型ではショックや多臓器不全をきたすことがある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血液・膿培養 | Yersinia pestisの検出 | グラム陰性桿菌 |
| PCR | Y. pestis特異遺伝子の検出 | 迅速診断に有用 |
| 血液検査 | 白血球増多、CRP高値 | 炎症反応の評価 |
ペストは臨床症状と疫学的背景から疑い、培養やPCRで病原体を同定することで確定診断となる。肺ペストでは胸部X線で浸潤影や空洞形成がみられることがある。
治療
- 第一選択:ストレプトマイシンまたはゲンタマイシン投与
- 補助療法:ドキシサイクリンやクロラムフェニコールも選択肢
- 注意点:早期治療開始と感染隔離が必須
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 偽膜性腸炎 | 重症下痢・抗菌薬使用歴 | C. difficile毒素検出 |
| 敗血症 | 原因菌多様・感染臓器特定困難 | 血培で多様な菌が検出 |
| 感染性腸炎 | 下痢・嘔吐が主体 | 便培養で他菌検出 |
補足事項
ペストは感染力が非常に高く、肺ペストはヒト-ヒト間の飛沫感染が成立するため、流行時には厳重な感染対策が必要となる。ワクチンは一部地域で利用可能だが感染予防の基本は曝露回避である。