フィラリア症
概要
フィラリア症は、フィラリア属の線虫による寄生虫感染症であり、主に蚊を媒介してヒトに感染する。リンパ系フィラリア症が代表的で、慢性化すると象皮症などのリンパ浮腫を引き起こす。熱帯・亜熱帯地域を中心に分布し、世界的な公衆衛生問題となっている。
要点
- 蚊による媒介が主な感染経路
- 慢性化でリンパ浮腫や象皮症をきたす
- 抗寄生虫薬による治療と予防が重要
病態・原因
フィラリア症は、主にバンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti)やブルギ糸状虫(Brugia malayi)などの線虫がヒトのリンパ系に寄生することで発症する。感染は蚊が線虫幼虫(ミクロフィラリア)を媒介することで成立し、慢性的なリンパ管障害を生じる。
主症状・身体所見
急性期には発熱、リンパ節炎、リンパ管炎などがみられる。慢性期には下肢や陰嚢などの高度なリンパ浮腫(象皮症)が特徴で、皮膚の肥厚や潰瘍形成も生じうる。微熱や全身倦怠感を伴うことがある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血液中ミクロフィラリア検出 | 夜間採血でミクロフィラリアが確認される | 血液塗抹標本による顕微鏡検査が有用 |
| 抗体・抗原検査 | フィラリア抗原・抗体の陽性 | 免疫診断法で補助的に用いられる |
| 超音波検査 | リンパ管拡張、虫体の運動像(Filarial dance sign) | 陰嚢や下肢のリンパ管評価に有用 |
診断は主に夜間の末梢血でミクロフィラリアの検出による。抗原・抗体検査や超音波検査も補助的に利用され、慢性例では臨床症状や流行地での疫学情報も加味する。
治療
- 第一選択:ジエチルカルバマジンやイベルメクチンなどの抗寄生虫薬投与
- 補助療法:リンパ浮腫に対する圧迫療法、衛生指導
- 注意点:再感染予防のため蚊の駆除や防虫対策も重要
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| リンパ浮腫 | 原因不明または癌治療後が多い | ミクロフィラリア陰性 |
| 象皮病 | フィラリア症以外の慢性リンパ浮腫 | 寄生虫感染の証拠なし |
| 感染性腸炎 | 消化器症状主体、浮腫は伴わない | 便検査で病原体検出 |
補足事項
世界的にはWHO主導で根絶活動が進められている。日本ではほぼ根絶されているが、輸入感染例や動物由来感染に注意が必要。慢性リンパ浮腫の管理は長期にわたり、生活指導が重要となる。