アルコール離脱
概要
アルコール離脱は、長期間の大量飲酒を中止・減量した際に生じる一連の精神・身体症候群である。症状は軽度の振戦から重篤なせん妄、けいれんまで多彩で、適切な管理が必要となる。重症例では生命予後に関わることがある。
要点
- 長期間飲酒後の急な中断で発症する
- せん妄やけいれんなど重篤な症状も
- 早期治療と再発予防が重要
病態・原因
アルコール長期摂取によりGABA作動性抑制系が亢進し、NMDA受容体を介した興奮系が抑制される。断酒によりこれらのバランスが急速に崩れ、中枢神経系の過興奮状態となることが主な機序である。リスク因子には大量飲酒歴、離脱歴、肝障害などがある。
主症状・身体所見
初期には振戦、不安、発汗、頻脈、悪心など自律神経症状が現れる。進行すると幻覚、けいれん、せん妄(振戦せん妄)などの精神症状や意識障害が出現する。重症例では高体温や循環動態不安定も認める。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血液生化学検査 | 電解質異常(低Mg、低Kなど) | 肝機能障害の評価も重要 |
| 頭部CT/MRI | 他疾患の除外 | けいれんや意識障害時施行 |
診断は飲酒歴、臨床症状の時間経過、CIWA-Arスコアなどを参考に行う。重症例ではせん妄やけいれんの鑑別のため画像検査も行う。肝機能・電解質異常・感染症合併の評価も必要。
治療
- 第一選択:ベンゾジアゼピン系薬剤による離脱症状のコントロール
- 補助療法:ビタミンB1(チアミン)補充、電解質補正、対症療法
- 注意点:けいれん・せん妄の早期発見、再飲酒予防指導
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| Wernicke脳症 | 眼球運動障害・失調・意識障害 | MRIで脳室周囲病変 |
| てんかん | 既往歴・発作様式 | 脳波異常 |
| せん妄 | 誘因多彩・飲酒歴不明 | 原因検索で他疾患除外 |
補足事項
症状は断酒後6〜48時間以内に発症し、重症例では振戦せん妄が3〜5日目に出現する。ビタミンB1欠乏によるWernicke脳症の合併に注意し、予防的投与が推奨される。