芳香族アミノ・ニトロ化合物中毒
概要
芳香族アミノ・ニトロ化合物中毒は、アニリンやニトロベンゼンなどの芳香族アミノ化合物およびニトロ化合物の吸入・摂取・皮膚吸収により発症する。主にメトヘモグロビン血症を引き起こし、重篤な場合は中枢神経障害や多臓器不全に至る。工業現場や化学薬品取り扱い時の曝露が主なリスクとなる。
要点
- メトヘモグロビン血症が最も重要な合併症
- 皮膚・呼吸器・消化管経路で急性中毒を生じうる
- 早期の診断とメチレンブルー投与が治療の鍵
病態・原因
芳香族アミノ・ニトロ化合物は体内で酸化的に代謝され、ヘモグロビンの鉄を酸化してメトヘモグロビンを生成する。これにより酸素運搬能が低下し、組織低酸素を招く。主なリスク因子は化学工場での曝露や不適切な薬品管理である。
主症状・身体所見
チアノーゼ、頭痛、めまい、息切れ、悪心・嘔吐などが出現する。重症例では意識障害、痙攣、ショック、多臓器不全に進行することもある。チアノーゼが酸素投与で改善しない点が特徴的。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 動脈血ガス分析 | PaO2正常・SpO2低下 | メトヘモグロビン血症の特徴 |
| CO-オキシメトリー | メトヘモグロビン高値 | 定量的診断に必須 |
| 血液検査 | 溶血所見・肝腎障害 | 重症例でみられる |
メトヘモグロビン濃度の上昇が診断の決め手となる。チアノーゼの割に酸素飽和度が改善しない場合は本中毒を疑う。血液はチョコレート色を呈する。
治療
- 第一選択:メチレンブルー静注
- 補助療法:酸素投与、対症療法、重症例で血液交換
- 注意点:G6PD欠損症ではメチレンブルー禁忌
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 一酸化炭素中毒 | チェリーレッドの皮膚色、意識障害 | COHb上昇、PaO2正常 |
| シアン中毒 | 呼吸苦、けいれん、アーモンド臭 | 乳酸アシドーシス、メトヘモグロビン上昇なし |
補足事項
G6PD欠損症ではメチレンブルーの使用により溶血が増悪するため注意が必要。また、慢性曝露では造血障害や発癌性への注意も必要とされる。