癤・癰
概要
癤(せつ)および癰(よう)は、毛包やその周囲の皮膚・皮下組織に生じる化膿性炎症で、主に黄色ブドウ球菌による感染が原因である。癤は限局性の毛包炎で、癰は複数の毛包が集簇して深部まで波及したものを指す。免疫低下や糖尿病などの基礎疾患がある場合に重症化しやすい。
要点
- 毛包から発生する化膿性炎症で、黄色ブドウ球菌が主な原因菌
- 癤は単一毛包、癰は多発・深在性で重症化しやすい
- 糖尿病や免疫抑制状態では注意が必要
病態・原因
毛包やその周囲組織に黄色ブドウ球菌が侵入し、化膿性炎症を引き起こす。皮膚のバリア機能低下、慢性疾患、免疫抑制などが発症リスクを高める。癤は単一毛包限局だが、癰は炎症が複数毛包に波及し、皮下組織まで及ぶ。
主症状・身体所見
発赤、腫脹、疼痛、熱感を伴う膿瘍性結節が皮膚に出現する。癤は中心部に膿点を形成し、癰はより広範囲に腫脹・圧痛がみられ、時に全身症状(発熱、悪寒)を伴う。重症例では蜂窩織炎や敗血症に進展することもある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 細菌培養 | 黄色ブドウ球菌の検出 | 膿汁や組織から採取 |
| 血液検査 | 白血球増多、CRP上昇 | 重症例や全身症状時に施行 |
| 超音波検査 | 膿瘍形成の有無 | 深部浸潤や鑑別に有用 |
膿汁や組織を用いた細菌培養で原因菌を同定する。全身症状がある場合は血液検査で炎症反応や敗血症の有無を確認する。深部病変の評価には超音波検査が役立つ。
治療
- 第一選択:切開排膿および抗菌薬投与(主にセフェム系やペニシリン系)
- 補助療法:局所の温罨法、疼痛管理、基礎疾患のコントロール
- 注意点:糖尿病患者や免疫抑制例では再発・重症化リスクが高く、早期治療・全身管理が重要
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 蜂窩織炎 | 境界不明瞭な発赤・腫脹 | 膿瘍形成少ない |
| 脂肪織炎 | 皮下脂肪組織が主座 | 画像で皮下脂肪の炎症 |
| 毛包炎 | 小膿疱で限局性、軽症 | 単一毛包のみ炎症 |
補足事項
再発例では基礎疾患(糖尿病、免疫不全など)の精査が推奨される。近年はMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)による難治例も報告されている。