甲状腺クリーゼ
概要
甲状腺クリーゼは、甲状腺機能亢進症の極めて重篤な急性増悪状態で、多臓器不全を来す致死的な内分泌救急である。主にBasedow病患者に発症し、誘因として感染や手術、ストレスが挙げられる。迅速な診断と治療が生命予後を左右する。
要点
- 甲状腺ホルモン過剰による多臓器障害が急激に進行
- 発熱、頻脈、意識障害などの重篤な症状を呈する
- 早期診断と集中治療管理が不可欠
病態・原因
甲状腺クリーゼは、甲状腺ホルモン(T3、T4)が急激に過剰となることで全身の代謝が亢進し、主に心血管系、中枢神経系、消化器系など多臓器に障害をきたす。誘因は感染症、手術、外傷、投薬中断、ストレスなどが多い。
主症状・身体所見
高熱、著明な頻脈、不整脈、心不全、精神症状(興奮・せん妄・昏睡)、消化器症状(下痢、嘔吐)、肝機能障害などがみられる。脱水やショック症状を伴うことも多い。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血中甲状腺ホルモン(FT3, FT4, TSH) | FT3/FT4高値、TSH抑制 | 甲状腺機能亢進の確認 |
| 肝機能・腎機能検査 | AST/ALT上昇、腎機能障害 | 多臓器障害の評価 |
| 心電図・心エコー | 頻脈、不整脈、心不全所見 | 心血管合併症の評価 |
日本甲状腺学会の診断基準では、甲状腺機能亢進症の既往に加え、発熱、頻脈、意識障害、心不全、肝障害などの重篤な臓器障害の組み合わせで診断する。画像検査は鑑別や合併症評価に用いる。
治療
- 第一選択:抗甲状腺薬(チアマゾール、プロピルチオウラシル)、無機ヨウ素、β遮断薬、ステロイド
- 補助療法:輸液、体温管理、酸素投与、感染対策、必要に応じて血漿交換
- 注意点:治療開始の遅れは致死率上昇、心不全・肝障害・感染症の管理も重要
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 甲状腺機能亢進症 | 徐々に進行、急性多臓器障害はまれ | 臓器障害の程度が軽い |
| 急性副腎不全 | 低血圧・意識障害・低Na血症が主体 | コルチゾール低値、TSH正常 |
補足事項
甲状腺クリーゼは発症後の致死率が高く、早期の集学的治療が不可欠である。治療抵抗例では血漿交換療法も検討される。高齢者や合併症例では非典型的な経過をとる場合もある。