正常圧水頭症
概要
正常圧水頭症(NPH)は、脳脊髄液の循環障害により脳室が拡大するが、髄液圧が正常範囲に保たれる水頭症である。高齢者に多く、歩行障害・認知障害・尿失禁の三徴を特徴とする。原因は特発性と続発性に分かれる。
要点
- 歩行障害、認知障害、尿失禁の三徴が特徴
- 脳室拡大を伴うが髄液圧は正常
- シャント術が治療に有効
病態・原因
脳脊髄液の吸収障害や循環障害により、脳室が拡大するが、髄液圧は正常範囲(200mmH2O以下)にとどまる。特発性のほか、くも膜下出血や頭部外傷、髄膜炎後などの続発性もある。
主症状・身体所見
歩行障害(小刻み歩行やすり足歩行)、認知障害(記憶力低下・注意障害)、尿失禁が三大症状で、進行すると日常生活動作の障害が顕著となる。歩行障害が最も早期に出現しやすい。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 頭部MRI/CT | 脳室拡大(Evans index>0.3) | 脳溝の狭小化やSylvian裂の拡大も参考 |
| 髄液排除試験 | 症状の一過性改善 | 30-50ml腰椎穿刺で除去し評価 |
| 髄液圧測定 | 正常範囲(200mmH2O以下) | 髄液圧亢進はみられない |
画像で脳室拡大と脳溝の狭小化を確認し、髄液排除試験で症状改善をみることで診断する。診断基準としては臨床三徴+画像所見+髄液圧正常が重要。
治療
- 第一選択:脳室腹腔シャント術(VPシャント)
- 補助療法:リハビリテーション、対症療法
- 注意点:シャント感染や閉塞、過剰排除による慢性硬膜下血腫に注意
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| Alzheimer型認知症 | 歩行障害が目立たない | 脳室拡大より萎縮が目立つ |
| Parkinson病 | 振戦や筋強剛が主体 | MRIで基底核異常 |
| 脳血管性認知症 | 局所神経症状が目立つ | 脳梗塞巣や白質病変 |
補足事項
早期診断・治療が予後改善に重要であり、歩行障害の出現時に鑑別疾患として常に念頭に置く必要がある。シャント術後も定期的なフォローが必要。