包虫症
概要
包虫症はエキノコックス属条虫の幼虫(包虫)による寄生虫感染症で、主に肝臓や肺に囊胞性病変を形成する。国内では北海道を中心に散発し、世界的には家畜と犬の生活環に関連する。慢性的経過をとり、囊胞の増大や破裂による重篤な合併症をきたすことがある。
要点
- エキノコックス属条虫の幼虫感染による人獣共通感染症
- 肝・肺に囊胞を形成し、無症状から重篤な合併症まで多様
- 診断には画像と血清学的検査、治療は外科的切除や抗寄生虫薬
病態・原因
包虫症は主にエキノコックス・グラニュロススやE. multilocularisの幼虫が人に感染して発症する。経口的に虫卵を摂取し、腸管から門脈を経て肝臓や肺で囊胞性病変を形成する。犬や野生動物が終宿主となり、生活環の維持に関与する。
主症状・身体所見
初期は無症状で経過することが多いが、囊胞の増大により肝腫大、右上腹部痛、黄疸、発熱などがみられる。囊胞破裂時にはアナフィラキシーや腹膜炎、二次感染の危険がある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 腹部超音波・CT | 肝・肺に囊胞性病変を認める | 囊胞内容や隔壁の有無を評価 |
| 血清抗体検査 | エキノコックス抗体陽性 | 感染の証明や経過観察に有用 |
| 病理組織検査 | 包虫の嚢胞壁や幼虫体検出 | 外科的摘出時に確定診断 |
囊胞の画像診断で特徴的な所見(多房性囊胞、内部隔壁、石灰化など)を確認し、血清抗体検査で補助診断を行う。確定診断は摘出組織の病理で幼虫体や囊胞壁の同定による。
治療
- 第一選択:囊胞の外科的切除
- 補助療法:アルベンダゾール等の抗寄生虫薬投与
- 注意点:囊胞破裂によるアナフィラキシーや播種に注意し、術前後の薬物療法を行う
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 肝膿瘍 | 発熱・炎症反応が強い | 画像で内部に膿性内容物 |
| 肝囊胞 | 単房性で症状に乏しい | 画像で内部構造が単純な囊胞 |
| 肝細胞癌 | 腫瘤形成・腫瘍マーカー上昇 | 造影CTで腫瘍血流像 |
補足事項
北海道などの流行地では住民健診でのスクリーニングが行われる。動物との接触や環境衛生が感染予防に重要。囊胞の部位・大きさ・合併症によって治療方針が異なる。