AT欠損症
概要
AT(アンチトロンビン)欠損症は、先天的または後天的にアンチトロンビン活性が低下することにより、血栓傾向を呈する疾患。主に静脈血栓塞栓症のリスクが高まる遺伝性凝固異常症で、深部静脈血栓症や肺塞栓症の若年発症例で重要となる。
要点
- アンチトロンビン活性低下により血栓形成傾向を示す
- 遺伝性(常染色体優性)が多く、発症年齢は若年〜中年
- 静脈血栓塞栓症の再発例では必ず鑑別
病態・原因
アンチトロンビンはトロンビンやXa因子などの凝固因子を阻害する生理的抗凝固因子であり、欠損症ではこの制御が障害される。遺伝性(主に常染色体優性)と後天性(肝障害、DIC、ネフローゼ症候群など)が存在する。
主症状・身体所見
主に深部静脈血栓症や肺塞栓症として発症し、下肢の腫脹・疼痛、呼吸困難、胸痛などがみられる。血栓症の家族歴や若年発症例は本症を強く示唆する。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| アンチトロンビン活性測定 | 低値 | 先天性では50~70%以下、後天性低下も鑑別 |
| 凝固系スクリーニング | 正常または軽度異常 | PT・APTTは正常例が多い |
| 遺伝子検査 | 変異の同定 | 家族歴がある場合に有用 |
アンチトロンビン活性低下の確認が診断の基本であり、繰り返し測定や家族調査が推奨される。後天性低下との鑑別には臨床経過や他疾患の除外が必要。
治療
- 第一選択:ヘパリン(非分画または低分子)、ワルファリンなど抗凝固療法
- 補助療法:AT製剤投与(手術・分娩・血栓症急性期など)
- 注意点:ヘパリン抵抗性に留意し、AT製剤併用が必要な場合あり
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| プロテインC,S欠乏症 | 他の抗凝固因子欠損、家族歴 | プロテインC/S活性低下 |
| HC-Ⅱ欠損症 | ヘパリン共役II低下、血栓傾向 | HC-Ⅱ活性低下 |
補足事項
AT欠損症では妊娠・分娩・手術時に血栓リスクがさらに高まるため、周術期や周産期管理が重要となる。ヘパリン抵抗性例ではAT製剤の補充が不可欠。