高血圧性脳症
概要
高血圧性脳症は、急激な血圧上昇によって脳血管の自己調節機能が破綻し、脳浮腫や神経症状を呈する急性疾患である。適切な降圧治療を行わなければ生命予後に関わる。高血圧緊急症のひとつとして臨床的に重要である。
要点
- 急激な血圧上昇が脳血流の自己調節障害を引き起こす
- 頭痛、意識障害、けいれんなどの神経症状が出現
- 迅速かつ慎重な降圧が治療の基本
病態・原因
高血圧性脳症は、急激な重度高血圧によって脳血管の自己調節能が破綻し、血管透過性亢進と血管周囲浮腫が生じることで発症する。背景には本態性高血圧や腎疾患、妊娠高血圧症候群などがある。
主症状・身体所見
主症状は頭痛、悪心・嘔吐、視力障害、意識障害、けいれんである。重症例では昏睡や局所神経症状を呈することもあり、乳頭浮腫が認められる場合もある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血圧測定 | 重度高血圧 | 収縮期180mmHg以上や拡張期120mmHg以上が多い |
| 頭部MRI | 後頭葉・小脳白質の浮腫 | T2強調画像で高信号、PRESとの鑑別重要 |
| 眼底検査 | 乳頭浮腫 | 重症例で出現 |
診断は急激な高血圧と神経症状の出現、画像での脳浮腫所見が根拠となる。MRIで後頭葉優位の白質浮腫(PRES:可逆性後頭葉白質脳症)を認めることが多い。
治療
- 第一選択:持続静注による降圧薬(ニカルジピン、ラベタロールなど)
- 補助療法:頭蓋内圧管理、必要に応じて抗けいれん薬投与
- 注意点:過度な急速降圧は脳虚血を来すため、目標は1時間で25%以内の降圧
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 脳梗塞 | 局所神経症状が主体 | MRIで限局性梗塞巣 |
| くも膜下出血 | 急激な激烈頭痛・意識障害 | CTでくも膜下腔出血像 |
| PRES | 高血圧以外の誘因も多い | MRIで後頭葉白質浮腫、臨床経過が類似 |
補足事項
高血圧性脳症の発症閾値は個人差があり、普段血圧が低い患者では比較的低値でも発症しうる。PRESとの鑑別は重要であり、両者は病態が重複することもある。