緊張性気胸
概要
緊張性気胸は、胸腔内に空気が貯留し続けることで内圧が上昇し、肺虚脱とともに縦隔偏位や循環障害を引き起こす致死的な緊急疾患である。迅速な診断と治療が生命予後を大きく左右する。主に外傷や医原性、自然気胸の重症例で発生する。
要点
- 胸腔内圧の持続的上昇により循環虚脱を来す
- 直ちに減圧処置・ドレナージが必要
- 致死的な経過をとるため迅速な対応が重要
病態・原因
胸腔内に空気が一方向性に流入し続け、排出されずに内圧が上昇することで発症する。主な原因は外傷(肋骨骨折、刺創など)、医原性(人工呼吸管理中、中心静脈カテーテル挿入時など)、自然気胸の増悪などが挙げられる。
主症状・身体所見
急激な呼吸困難、チアノーゼ、頻脈、血圧低下、意識障害などがみられる。患側胸部の膨隆、呼吸音減弱、打診音の鼓音化、気管偏位(健側への偏位)などが身体所見として特徴的である。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 胸部X線 | 患側肺虚脱、縦隔偏位、横隔膜下降 | 緊急時は撮影困難な場合あり |
| 身体診察 | 呼吸音減弱、気管偏位、皮下気腫 | バイタル異常と併せて臨床診断 |
X線での縦隔の健側偏位、患側肺の虚脱、横隔膜の下降などが診断の手がかりとなるが、ショック状態では画像検査を待たず臨床所見で診断し、迅速な処置が優先される。
治療
- 第一選択:直ちに患側第2肋間鎖骨中線上への穿刺減圧、その後胸腔ドレナージ
- 補助療法:酸素投与、循環管理、必要に応じて人工呼吸管理
- 注意点:遅延すると心停止に至るため、診断が疑われた時点で直ちに処置を開始
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 心タンポナーデ | 頸静脈怒張、心音減弱、血圧低下 | 心エコーで心嚢液貯留 |
| 肺塞栓症 | 突然の呼吸困難、胸痛、頻脈 | Dダイマー上昇、CTで血栓確認 |
| 急性心筋梗塞 | 胸痛、ST上昇、心電図変化 | 心筋逸脱酵素上昇、心電図異常 |
補足事項
緊張性気胸は初期対応の遅れが致命的となるため、救急現場では“疑わしきは即処置”の原則が重要である。人工呼吸器装着中の患者や外傷患者では特に注意が必要。