発疹チフス
概要
発疹チフスはリケッチア・プロワゼキ(Rickettsia prowazekii)による急性感染症で、主にシラミを介して伝播する。高熱と全身性の発疹を特徴とし、歴史的に集団発生や戦争時の流行が問題となった疾患である。
要点
- リケッチア属細菌による全身性感染症
- シラミ媒介で流行しやすい
- 高熱・発疹・全身症状が主徴
病態・原因
発疹チフスはリケッチア・プロワゼキの感染によって発症し、主な感染経路は体シラミの糞便が皮膚の微小損傷から侵入することによる。人から人への直接感染は基本的にみられず、衛生環境の悪化や戦争・災害時に流行しやすい。
主症状・身体所見
突然の高熱、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感とともに、発症数日後から体幹を中心とした紅斑性発疹が出現する。重症例では意識障害や循環不全を呈し、皮膚の発疹は四肢や顔面には比較的少ない特徴がある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血清抗体検査 | リケッチア抗体価上昇 | ペア血清による抗体価上昇の確認 |
| PCR検査 | リケッチアDNA検出 | 血液や皮膚生検から検出可能 |
| 血液検査 | 白血球増加、肝酵素上昇 | 非特異的所見 |
発疹チフスの診断は臨床症状と疫学的背景に加え、血清抗体価の上昇やPCRによるリケッチアDNA検出が有用である。皮膚生検でのリケッチア検出も補助的に行われる。
治療
- 第一選択:ドキシサイクリンなどテトラサイクリン系抗菌薬
- 補助療法:対症療法(水分補給、解熱鎮痛薬など)
- 注意点:妊婦・小児では抗菌薬選択に注意、早期治療が重症化予防に重要
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 腸チフス・パラチフス | バラ疹・消化器症状主体 | サルモネラ培養陽性、リケッチア抗体陰性 |
| 発疹熱 | 軽症で発疹が中心 | リケッチア・ツツガムシ抗体で鑑別 |
| 紅斑熱 | ダニ媒介、発疹・刺し口あり | PCRで病原体同定 |
補足事項
発疹チフスは歴史的には大流行を繰り返したが、現在は衛生環境の改善と抗菌薬治療により発症は稀となっている。再発型(Brill-Zinsser病)にも注意が必要。