横隔膜弛緩症

概要

横隔膜弛緩症は横隔膜の一部が弛緩して胸腔側へ突出し、腹腔臓器が胸腔内に移動する疾患である。主に先天性と後天性に分けられ、無症状から重篤な呼吸・消化器症状まで幅広い臨床像を呈する。診断と治療には画像診断と外科的介入が重要となる。

要点

  • 横隔膜の弛緩による臓器の胸腔内逸脱を特徴とする
  • 無症状例も多いが、呼吸困難や消化器症状を呈することがある
  • 画像診断と外科的治療が診断・管理の中心となる

病態・原因

横隔膜弛緩症は横隔膜の筋線維や神経支配の異常により局所的な弛緩が生じ、腹腔臓器が胸腔内へ逸脱する。先天性の場合は発生異常、後天性の場合は外傷や神経障害、加齢性変化などが原因となる。

主症状・身体所見

多くは無症状だが、進行例では呼吸困難、咳嗽、胸痛、腹部膨満感、消化不良、嘔気などがみられる。身体所見では患側胸部の呼吸音減弱や心音偏位、腹部の陥凹などが認められる場合がある。

検査・診断

検査所見補足
胸部X線横隔膜の挙上・臓器陰影の胸腔内突出無症状例でも異常所見を示す
胸腹部CT/MRI横隔膜弛緩部位と腹腔臓器の胸腔内逸脱を確認詳細な部位・範囲評価に有用
消化管造影胃・腸管の胸腔内移動や変位消化管症状が強い場合に追加

診断は画像診断が中心で、胸部X線やCTで横隔膜の挙上と腹腔臓器の胸腔内逸脱を確認する。消化管造影は消化器症状が強い場合に有用。鑑別には横隔膜ヘルニアや食道裂孔ヘルニアなどを考慮する。

治療

  • 第一選択:症候性または重症例では外科的修復術
  • 補助療法:保存的治療(経過観察、呼吸リハビリテーション等)
  • 注意点:無症状例は経過観察、再発や合併症に注意

鑑別・比較

疾患見分けるキーポイント検査差異
横隔膜ヘルニア横隔膜欠損部からの臓器脱出明瞭な横隔膜欠損を画像で確認
食道裂孔ヘルニア食道裂孔部から胃の胸腔内逸脱食道裂孔部の拡大を認める
横隔神経麻痺横隔膜の運動障害による挙上神経伝導検査や動態評価

補足事項

横隔膜弛緩症は高齢者で偶発的に発見されることが多く、無症状例では経過観察が選択される。症状や臓器圧迫が明らかな場合は外科的治療が推奨される。合併症として腸閉塞や呼吸不全のリスクがある。

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