単純性びまん性甲状腺腫
概要
単純性びまん性甲状腺腫は、甲状腺全体がびまん性に腫大するが、明らかな甲状腺機能異常や炎症、腫瘍を伴わない良性疾患である。多くは思春期や妊娠など生理的なホルモン需要増加時に発症し、無症候性で経過することが多い。甲状腺機能は正常であることが特徴である。
要点
- 甲状腺全体がびまん性に腫大する
- 甲状腺機能は基本的に正常
- 思春期や妊娠などで発症しやすい
病態・原因
ヨウ素需要の一時的な増加や、成長・妊娠などの生理的変化によりTSHが軽度上昇し、甲状腺がびまん性に腫大する。明らかな自己免疫異常や腫瘍性変化は認められない。ヨウ素摂取不足が背景にあることもある。
主症状・身体所見
多くは無症状であり、頸部の腫大(前頸部の腫れ)を自覚して受診する。圧痛や発赤などの炎症所見はなく、甲状腺の腫大以外の症状は乏しい。甲状腺機能亢進症や低下症の症状は基本的にみられない。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 甲状腺ホルモン | FT4・FT3・TSHは正常域 | 甲状腺機能正常が診断の要件 |
| 超音波検査 | びまん性腫大、結節なし | 腫瘍・炎症性変化を除外 |
| ヨウ素摂取評価 | ヨウ素摂取量の低下あり得る | 必要に応じて尿中ヨウ素検査 |
甲状腺機能が正常で、超音波でびまん性腫大のみ認め、結節や炎症・腫瘍性変化がないことが診断基準となる。画像所見では甲状腺の均一な腫大がみられる。
治療
- 第一選択:経過観察(多くは自然軽快)
- 補助療法:ヨウ素補充(必要時)、TSH抑制療法
- 注意点:腫大の進行や機能異常出現時は再評価
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| Basedow病 | 甲状腺機能亢進症状、自己抗体陽性 | 甲状腺ホルモン高値 |
| 慢性甲状腺炎 | 抗TPO抗体陽性、硬い腫大 | 超音波で不均一性 |
| 腺腫様甲状腺腫 | 結節性腫大、超音波で結節形成 | 結節性所見あり |
補足事項
思春期や妊娠など一過性の生理的現象として発症することが多く、特別な治療を要さないことが多い。定期的な経過観察が重要であり、機能異常や結節形成が出現した場合は再評価を行う。