ノルマルヘキサン中毒
概要
ノルマルヘキサン中毒は、有機溶剤であるノルマルヘキサンの吸入や経皮暴露によって発生する中毒。主に末梢神経障害を引き起こし、労働現場での職業性曝露が多い。進行すると不可逆的な神経障害を残すことがある。
要点
- 有機溶剤による職業性中毒の代表例
- 末梢神経障害(多発ニューロパチー)が主症状
- 早期診断・曝露回避が予後改善の鍵
病態・原因
ノルマルヘキサンは工業用溶剤として広く用いられ、吸入や皮膚から体内に取り込まれる。体内で代謝される過程で神経毒性代謝物(2,5-ヘキサンジオン)が生成され、軸索変性を引き起こす。長期曝露や高濃度曝露がリスク因子となる。
主症状・身体所見
初期は四肢末端のしびれや感覚低下、筋力低下が現れる。進行すると筋萎縮や歩行障害、腱反射低下などの多発性末梢神経障害を呈する。重症例では自律神経障害や中枢神経症状もみられる。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 神経伝導速度検査 | 伝導速度低下・軸索障害型 | 多発ニューロパチーの証明 |
| 尿中2,5-ヘキサンジオン測定 | 上昇 | ノルマルヘキサン曝露の指標 |
| 血液・尿一般検査 | 異常なし〜軽度肝機能障害 | 他疾患除外目的 |
神経伝導検査で軸索障害型多発ニューロパチーを認める。尿中2,5-ヘキサンジオンの上昇が診断の補助となる。職業歴・曝露歴の聴取が極めて重要。
治療
- 第一選択:曝露中止と環境改善
- 補助療法:ビタミンB群投与・リハビリテーション
- 注意点:早期発見と曝露再発防止、重症例では不可逆的障害に注意
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| トルエン中毒 | 精神症状・肝障害が強い | 尿中馬尿酸上昇 |
| Guillain-Barré症候群 | 急性発症・自律神経障害 | 髄液蛋白細胞解離 |
| 糖尿病性ニューロパチー | 糖尿病合併・慢性経過 | 血糖異常・神経伝導速度低下 |
補足事項
ノルマルヘキサン中毒は日本の工業現場でも報告が多く、作業環境管理と作業者教育が重要。神経障害発症後の回復は限定的であり、曝露予防が最も有効な対策となる。