ウイルス性下痢症
概要
ウイルス性下痢症は、主にロタウイルスやノロウイルスなどのウイルス感染により発症する急性の下痢症である。乳幼児から成人まで幅広い年齢層にみられ、特に冬季に流行しやすい。重症例では脱水症に注意が必要となる。
要点
- ロタウイルス、ノロウイルスなどが主な原因
- 急性の水様性下痢と嘔吐を主症状とする
- 乳幼児や高齢者では重症化や脱水に注意
病態・原因
ウイルス性下痢症は、経口感染により腸管にウイルスが侵入し、腸粘膜細胞を障害することで発症する。主な原因ウイルスはロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルスなどで、集団感染も多い。感染力が強く、特に冬季に流行しやすい。
主症状・身体所見
代表的な症状は急性の水様性下痢、嘔吐、発熱であり、腹痛を伴うこともある。乳幼児では脱水症状が目立ちやすく、口渇や皮膚のツルゴール低下、尿量減少がみられる。重症化すると意識障害やショックに至ることもある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 便ウイルス抗原検査 | ロタ・ノロ等のウイルス抗原検出 | 簡易キットで迅速診断可能 |
| 血液検査 | 脱水に伴う電解質異常や腎機能障害 | 重症例や合併症が疑われる場合に施行 |
| 便培養 | 病原性細菌の除外 | 細菌性腸炎との鑑別に有用 |
診断は臨床症状と流行状況から推定されるが、確定には便中ウイルス抗原検査が有用。画像検査は原則不要であり、重症例や合併症が疑われる場合に限り施行される。
治療
- 第一選択:経口補液(ORS)や点滴による脱水補正
- 補助療法:整腸剤や対症療法(解熱剤、制吐剤など)
- 注意点:抗菌薬は無効、二次感染や重度脱水に注意
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 細菌性腸炎 | 発熱や血便、重篤な腹痛を伴いやすい | 便培養で細菌検出 |
| 偽膜性腸炎 | 抗菌薬使用歴と血便、重度腹痛 | 便中クロストリジウム・ディフィシル毒素 |
| 過敏性腸症候群 | 慢性的経過、ストレス関連 | 器質的異常や炎症所見なし |
補足事項
ワクチンによる予防(ロタウイルスワクチン)は乳幼児で有効。集団感染対策として手洗い・消毒が重要であり、特にノロウイルスはアルコール消毒が効きにくいため次亜塩素酸ナトリウムが推奨される。